第17章 東京卍リベンジャーズ・佐藤龍星&菱小次楼
「見ろ。オレはちゃ〜んと持ってっからな♪…でも、レイナから電話なんて無かったぞ。オマエ、ホントにかけたのかよ」
『ホントだよ!何度もかけたもん』
「でも実際…」
言い返そうと口を開いた小次楼が、携帯を開いて動きを止める
「……ヤベ。……充電切れてら…」
誤魔化すようにヘラリと笑うと
私が文句を言い出す前に肩に腕を回してきた
「まぁまぁまぁ…そんな事もあんだろ?なぁレイナ」
『はぁ?』
「…何だよ、身体冷えちまってんじゃん。こんな所居ねーで早くウチ行こーぜ♪」
『ちょっ、小次楼!』
普段から調子のいい小次楼は、私の背中を押すようにして歩き出す
その後ろから龍星がゆっくりとついてきた
小次楼の家庭は、滅多に親が帰って来ない
いわゆるネグレクト
夜の仕事で忙しいママとふたり暮らしの龍星のところも
同じような環境だった
私はといえば
母親の再婚相手が仕事もせずに家で飲んだくれて、息が詰まるような毎日を送っていた
胸が大きくなりはじめた小5の頃から、男は露骨に私をいやらしい目で見てくるようになり
つい最近その事に感付いた母親が、事あるごとに私にあたり散らすようになった
家が近所だった小次楼と龍星は昔からベッタリとつるんで、私の目には自由気ままに生きているように見えた
ふたりは小6になった今でも相変わらず一緒で
いつも楽しそうな彼らの事を、正直羨ましく思っていた私は
小次楼の住むアパートがあるこの場所に、ちょくちょく遊びに来るようになった
小次楼と龍星は、地元の不良達の中でも割と名前が知られているみたいだったけれど、男同士の世界のことはよく分からなかった
自分の居場所と呼べるものがなかった私は
幼馴染というのを口実に彼らに甘え、側に置いてもらっていた
小次楼の家は、かなり年季の入ったアパートの2階で
小さな台所と6畳の和室がふた部屋に
風呂、トイレがついていた
「レイナ、もう飯食った?」
『ん?食べてないけど…』
「んじゃ、チャーハン作っから一緒に食うか?」
ゴソゴソと冷蔵庫を漁っている小次楼に、私は『…ウン』と答えた
小次楼は慣れた様子で材料を刻むと
フライパンで手早く3人前の材料を炒めはじめた