第16章 東京卍リベンジャーズ・佐野万次郎
どんなに辛いことがあっても
大切な人をなくしても
時間はこれまでと同じはやさで流れていく
身の周りで起こる様々な出来事が容赦無く背中を押してきて
悲しみの淵にとどまることを許してはくれなかった
俺とレイナは
心に開いてしまった大きな穴を埋め、止まってしまいそうになる足を強引に前へと踏み出させる為に
温もりを求め合うようになった
ケンチンと三ツ谷は俺たちの関係に気が付いていたと思う
けれど
アイツらが何かを言ってくることは無かった
それから訪れたクリスマスも、年越しも
仲間うちでワイワイ過ごした去年と違って
どこか他人事のような気分だった
東卍の総長として弱い所を見せないよう、精一杯気を張ってはいたけれど
6人いた創設メンバーは半分になり
あの頃見ていた夢も
仲間と一緒に目指していた目標も
本当はもうよく分からなくなってしまって
唯一、願うことといえば
" 大切な人をこれ以上失いたくない "
ただ
それだけだった
なのに
2月もそろそろ終わりに差し掛かる頃
俺は抗争の中で
妹のエマを失ってしまった
エマを殺したのは
元愛美愛主で、一時は東卍の参番隊隊長に入れたこともある稀咲だった
聖夜決戦での裏切りを三ツ谷と千冬から聞いた俺は
年明けの集会で稀咲をクビにしていた
稀咲と共に半間も出て行くことになり、2人についていた隊員達約350人が一気に東卍を抜けた
奴らが流れたのは、神奈川最大の不良集団であり
六本木の灰谷兄弟や九代目黒龍総長の斑目獅音ら極悪の世代をも取り込んだ " 横浜天竺 " というチームだった
総長の黒川イザナは腹違いの兄にあたる人物で
真一郎とは昔から交流があったらしく、俺の事を酷く憎んでいた
俺を空っぽにしたいと願うイザナと共謀して
稀咲はエマを襲ったのだった