第16章 東京卍リベンジャーズ・佐野万次郎
「……オマエ、さ………何であの夜…あの場所に居たんだよ」
『……ぇ…』
ゴクリと唾を飲み込み
レイナからもし、場地への想いを決定的にする言葉を聞かされることになっても
キチンと受け止めようと覚悟を決める
「………あの時、言ってた……" 場地に言いたかった事 " って……何…?」
『………あぁ…』
一瞬の沈黙のあと
レイナは俺の胸元に額を押し付けたまま、ポツリポツリと話し出した
『………あの日…圭介の家に行った時………おばさんがね……すごく、泣いてたの。………前に学校ダブった時……圭介…" オフクロのことはもう2度と泣かせない " って誓ってたのに…あんなに泣かせて………そんな姿見てたら、私…悲しむよりも先に頭にきちゃったんだ…』
「……」
『…それで、あの場所に行って……圭介の魂みたいなものがもしまだ残ってたら…文句言ってやろうと思ったの。……" もっと自分を大切にしてよ " って、怒鳴ってやりたかった。…………………カッとして周りが見えなくなってたって…今は反省してる。……万次郎が連れ帰ってくれて良かったよ』
「……」
彼女の話は
予想とは全く違うものだった
(……オレは…思い違いをしているのかもしれない…)
悪い展開にならなかった安堵感から
小さく息をついた
『……おばさん…" 圭介に会いたい " …って泣きながら何度も…何度も言ってた………グスッ………ハァ…………おかしいな……まただ…』
「……レイナ…?」
少し身体を離して、顔を覗き込むと
彼女は涙をいっぱいに溜めたまま俺を見つめ返してくる
『……圭介が亡くなってから……誰の前でも泣けなかった………なのに、万次郎と居ると…涙が出てくるの。………フッ……何でだろうね…』
苦笑いしたレイナの瞳から
大粒の雫が溢れ落ちた
「……」
『…ホントにゴメン……" 慰めてあげる " って言ったのは私なのに…』
「……そんなこと気にすんな…………オレも…そうだったんだ…………ずっと、人前で泣いたことなんか無かった…」
幼い頃から弱いヤツが大嫌いで
誰にも涙を見せないように生きてきた
そんな俺に
あの夜レイナは泣き方を教えてくれた
そして、涙の止め方も
俺は
泣いている彼女を腕の中に包み込んだ