第10章 東京卍リベンジャーズ・三ツ谷隆
「不良になる」と宣言した小5の時
レイナは、それほど興味無さそうに『ふーん』と言っただけだった
喧嘩して服が破けていたり
泥だらけで帰った時も
少し呆れたように『早くお風呂に入って来なよ』と言うくらいで
彼女はオレのやっていることを
ただ淡々と受け止め、自由にさせてくれていた
けれどある時
オレは逆恨みから待ち伏せされ
初めて鉄パイプで頭を殴られた
夜遅くに顔中血だらけで帰ったオレを見て
彼女は激しく動揺した
出血の割に怪我の程度は大したことないと分かると
安心感からか手当ての途中で突然泣き出してしまった
レイナの涙を見たことがなかったオレは
オロオロしながらも何とか宥め
落ち着かせてから隣の部屋の前まで送っていった
「…ひとりで平気か?」
『……うん。………ゴメン……泣いたりして…』
「…ぃゃ、別に…謝ることじゃねぇけど…」
心配でその場を離れられないでいるオレに
彼女は言った
『……ゴメンね………本当に…もう大丈夫…』
「…でも…」
『………隆の側に居るなら…私も強くならなきゃいけないから…』
「……レイナ…」
レイナは腕を伸ばし
オレの身体に縋るように抱きついた
『…おやすみ、隆…』
「………おやすみ…」
ドアが閉まる間際にいつもの笑顔が見えて
オレは少しだけホッとした気持ちで自宅へ戻った
レイナの泣き顔を見たのは
その時だけだった
東卍を結成し、黒龍を潰した後は
噂を聞きつけた色々なチームが殴り込みをかけてくるようになり
バットや鉄パイプを持った相手と戦うことも増えていった
目立つ怪我をして家に帰ると
留守番がてらルナやマナと遊んでくれていた彼女が
『こんなになるまでバっカみたい』と文句を言いながらよく手当てをしてくれた
『うわぁ〜…肩のトコ、すっごい腫れてるよ』
「バカ!イテェからつつくなって!」
『は⁇バカはどっちよ!隆のバカ!』
遠慮なく言い合うオレたちを見て
カーテンから顔を覗かせているルナとマナが可笑しそうに笑う
そんな光景が
段々とオレ達の日常になっていった