第10章 東京卍リベンジャーズ・三ツ谷隆
「……」
『……………どぉ…?』
「…………んー………何か……ホッとする…」
『……フフ………でしょ?』
「……」
『………隆………………ホッとしたくなった時は…いつでも寄りかかっていいからね…』
オレは身体を起こして彼女の方を向いた
「……オマエ……何で今日はそんなことばっか言ってんの…」
『……』
「……………もしかして………今朝のアレ…聞こえてた?」
気まずそうな顔をした彼女を見て
観念したオレは大きなため息をついた
──────────
昨日
オレは生まれて初めて家出をした
何もかも嫌になって出てきたはずなのに
黙って置いてきた妹たちのことがずっと気になって仕方なかった
けれど
元の生活に戻りたくない気持ちもあって
現実逃避をしたままズルズルと時間を過ごしてしまった
朝になって家に帰ると
母親に思いきりぶん殴られた
その後
母親はオレを抱きしめて
"いつもごめんね" と言って泣いたのだった
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「……オレ………ダセェよな…」
『…そんなことないよ』
「ダセェだろ………オレ…兄貴なのにさ……マジで格好悪ぃ…」
自分のせいで母親を泣かせてしまったことを思い出し
不甲斐なさに落ち込むオレの身体を
レイナは強く抱きしめた
『隆はダサくなんかない』
「……っ…」
『…隆は…格好いいお兄ちゃんだよ…』
「……」
『………でも…私には……ダサい所もいっぱい見せて欲しいんだ…』
レイナの声と体温が
身体に染み込んでくる
『………隆…………私の前だけでは…いいお兄ちゃんになろうとしないで………そのままの隆でいてよ…』
「………レイナ…」
レイナは身体を離すと
目を細めてそっと微笑んだ
熱い雫がポロポロとこぼれ落ちて
オレは自分が泣いていることに気が付いた
涙の跡を拭うように彼女の指が頬をなぞった
次の瞬間
唇に柔らかいものが触れた
レイナがくれた初めてのキスは
少ししょっぱくて
でも
とても優しい味がした