第10章 東京卍リベンジャーズ・三ツ谷隆
『……ハァ……すごいなぁ隆は……何でもできちゃうんだね…』
「あ?そんなことねーよ」
『…そんなことあるよ……運動もできるし…頭もいーし……工作も…絵も上手いしさ……料理だって…』
「…料理は…オマエが教えてくれたんだろ…?」
『……そーだけど…』
「…?…」
『……なんか………隆が作った方が…美味しい気がする』
不満げに口を尖らせたレイナを見て、オレは笑ってしまった
『…ちょ、なに笑ってんのよ』
「……だって……何でオマエ…ムッとしてんだよ…」
『……何か……嫌なんだもん…』
「…?…」
『………隆がひとりで何でも出来たら……私のことなんて…要らなくなっちゃうじゃん…』
レイナの言った言葉の意味が
その時のオレにはまだよく理解できなかった
「……」
膝を抱えて小さくなった彼女がなんだか寂しそうで
俯いている横顔を見つめながら
オレは小さな声で言った
「………オレ……レイナの作った料理…好きだよ…」
なぐさめでも何でもなく素直にこぼれ出たその言葉を聞いて
彼女はパッと顔を上げた
『…ホント⁉︎』
「……ぇ?……ぁ…うん………オマエが作ると……なんか…優しい味がする…」
『……』
「………オレは……自分で作ったモンより…レイナが作ってくれた料理の方が…美味いと思うよ…」
クリクリとした丸い目が
柔らかく細められる
『……嬉しい…』
青白い月明かりの下で
オレは
彼女のこの笑顔がとても好きだと思った
窓の下に並んで座りながら
ぬいぐるみを見つめていたレイナが
不意に言った
『……ねぇ隆………私の前では……甘えていーよ?』
突然
何を言い出すのかと思った
「…は?……俺はアニキだぞ。…誰かに甘えるなんてできるか…」
『いーから』
レイナはそう言うと
こちらへ腕を伸ばしオレの頭をグイと引き寄せた
「…な、何だよ」
『チョット黙ってて』
「…っ」
『…もっと…力抜いてよ』
「…えー…」
『早く』
「………分かったよ…」
彼女の肩に頭を乗せるような形で身体を預ける
何も言わずにそうしているうちに
気持ちが穏やかになっていくのを感じた