第10章 東京卍リベンジャーズ・三ツ谷隆
その時
オレの目の前にスーパーの白いビニール袋がつき出された
『これ、持てる?』
そこに立って居たのが隣の部屋に住んでいるあの転校生だと分かるのに
数秒かかった
「……ぇ?…………あ……ウン…」
オレが袋を持つと
レイナはルナの前に両手を広げてしゃがんだ
『…おいでルナちゃん……私が抱っこしてあげる…』
「………グスッ…………レイナ…ちゃん…」
"隣の部屋のお姉ちゃん"の顔を見て涙が引っ込んだルナが、レイナの首に腕を回して身体を預けると
彼女は立ち上がり目を細めて笑った
『ヨシ。じゃ、帰ろ♪』
アパートの部屋へ帰ると
眠ってしまった2人を布団に寝かせた
「…ありがとな……重かったろ?」
『全然大丈夫♪…ウチの弟のがもっと重かったもん』
「あれ?…オマエん家、弟いるの?」
『…ママが…前の家出て行く時に連れてっちゃった。…アタシはパパの世話するために置いてかれたの』
「……」
『……でも…ここに引っ越してきてからパパあんまり帰って来ないんだ……多分女の人の所…』
「…ぇ……じゃあオマエ…あの部屋にひとりで居るのか?」
『そーだよ』
「……」
『…ま、たまに帰って来て…ごはんのお金置いてってくれるからいーけどね』
ケロッとした顔で答える彼女になんて言えばいいのか分からず
黙ってしまったオレにレイナは続けた
『ねー…キミんち、晩ごはんってどうしてるの?』
「…ぇ?…これからオレが作るんだけど…」
『じゃあ、一緒にやろーよ♪…ひとりで作っても…いつも食べ切れないんだ』
オレたちは
家の台所に並んで立ち、彼女の買ってきた材料を使ってグラタンとサラダを作った
手を動かしながらお互いに色々な話をした
これまで毎日、義務的にしていた料理が
彼女と一緒だと、まるで違うことのように感じた
マナにミルクをあげた後
いい匂いにつられて起きてきたルナと3人で食卓を囲んだ
ルナは上機嫌で
ずっとレイナに話しかけていた
下の子の扱いに慣れているらしい彼女は
とても優しくルナの相手をしてくれて
この日はいつになく笑い声に溢れた楽しい夕食となった