第7章 東京卍リベンジャーズ・三途春千夜
レイナが感情を爆発させたのは
その時だけだった
次の日、食事を届けに行ったオレに彼女は謝り
『片付けてくれてありがとう』と言った
父親の死を黙っていたことの償いを申し出たマイキーに
レイナは自宅に残してきた荷物の中から、アルバムを持って来て欲しいと頼んだ
けれど
調べてみると彼女が暮らしていた父親名義のマンションは
死後、本妻の手に渡り
部屋の中に残されていた彼女の私物はもう全て処分されてしまった後だった
オレの口からそのことを告げられたレイナは
『…そう…それなら仕方ないね』と言ってすぐに諦めた
「……親父さんが写ってる写真だけでも…何枚か譲ってもらえるように言ってみるか?」
『……ううん………いいの……』
「……」
『…………きっとそれは……私の知ってるパパの顔じゃないから…』
「……」
『………ハル………色々調べてくれて…ありがとう…』
彼女はそう言うと
リビングの窓に近づいて外を見つめた
『……フッ………馬鹿だよね…私………あの部屋が…何ヶ月もそのまま残ってるわけないのに…』
「……」
『…………もう……私にはなんにもないんだね………………帰る場所も…………思い出も…………何も……』
オレンジ色の夕陽の中に
浮かんでいるような彼女の影
儚く
消えてしまいそうなその小さな背中を
オレはただ見つめることしかできなかった