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幸せの生き方 ※名探偵コナン 安室透落ち予定

第1章 出会い




あらかたの手当てを終えて、彼は少女を束縛している鎖を見た。

南京錠で繋がっている、簡単な拘束具のようだ。
鍵もサイドテーブルに置いてある。

鍵を手に取り、鎖を掴んだ。


「……もう、いいの?」


か細い声が、聞こえた。

驚いて声のした方へ視線を向けると、先ほどまで遺体を見つめていた瞳が、彼を見つめている。
変わらず生気のない瞳で、不思議そうな表情を作り見つめている。


「………あぁ、もういいんだ」


少女の言わんとしていることは分かった。
きっと、拘束具を外す事がこの惨事の終わりの合図なんだろう。


「そう。早いんですね」


そう言って、へらっと笑う少女に彼の目は釘付けになった。

向けられる笑顔すら、痛々しい。
作り笑顔に見えない、楽しそうに笑う彼女に彼は胸を締め付けられる。
だが、瞳の奥に見える光は、笑っていない。

一体、どれだけ地獄を味わえばこんな風に笑うようになるのか。
考えるだけで、胸にキリキリとした痛みが走る。


「……君は、ここの夫婦の娘なのかい?」

「うん。」


鎖を外しながら、問いかけると当たり前だと言わんばかりの返答。


「両親がどんな仕事をしてるか、君は知っているかい?」


鎖を外して、自由になった少女に質問をする。
これは、大事な質問だ。

もし何か知っていれば、問答無用で殺すしかない。
心は痛むが、それが組織のため。


「仕事…。お母さんはよくご飯くれるの。それに綺麗な服とか、お掃除とか…。いっぱい優しいの。」


ふふっと嬉しそうに笑う少女。
少しだけ、瞳の奥に光が揺れた。
的外れな回答に、彼は困惑した表情を向けた。

その表情に、何を思ったのか少女は言葉を続ける。


「あ、お父さんはね。あんまり来ないからわからないけど、たまに運動していくの。いっぱい私の体を切って喜んでくれるの。」

「……そうか。」


聞きたくない、現実だった。

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