第1章 出会い
先ほどよりも大量に溢れる血。
それでも、少女は身動き一つしない。
「いいねぇ…。ナミちゃん。ほら、こっち向いて。」
先ほど扉の前で聞いた、ねっとりとした気持ち悪い声。
その声に反応して、少女は顔を動かした。
男性越しに、少女と目が合う。
「……ッ」
その瞳は、光も何も宿っていない。
まるで人形のような瞳だった。
途端に襲う、なんとも言えない感情。
…少女を、ここから出さなければ。
そう思ったときには、彼は男性を銃で打ち抜いていた。
ベッドの横に転がる暖かかった肉塊。
それを彼女はぼぉっと見つめていた。
先ほど刺された腕から、転がる肉塊の頭に血が滴り落ちる。
彼は近くのテーブルに置かれた包帯を手に取った。
よく見れば、消毒液もある。
救急キットが大げさなくらい大量に置いてあるのだ。
おそらく、すべて少女のけがの手当て用だろうことは察しついた。
今だ遺体を見つめる少女に近寄り、腕を掴む。
それでも少女は反応しない。
軽く消毒を済ませ、包帯を巻いていく。
治療をしながら体を観察すれば、どれだけ多くの傷があるか改めて分かった。
古そうな傷から、最近出来たと思われる傷まで。
あばらの浮き出た細い体には、不釣り合いな痛々しい傷。
思わず、目を背けてしまった。