第1章 出会い
「一つ、質問をよろしいですか。」
カチャリ、と銃口を男性の頭に押し当てて彼は問いかける。
ひんやりとしたその感触に、今まで吠えていた男性は
顔面蒼白で押し黙った。
「彼女は、誰ですか」
こんな女性知らない。
部下から、来訪者は男性一名だと聞いていた。
それに、今までの調査で夫婦に子供がいないことも分かっている。
「だ、誰って…。ここの夫婦の娘だ…」
恐怖に引きつりながら、男性は答えた。
娘…?
まさか、そんなはずはない。
そう思いながらも、今この状況で嘘をつくメリットも見当たらない。
念のため、男性を睨みつけて本当か?と視線で脅すが
男性は本当だ!!と唾を飛ばしてくる。
「…では次の質問です。なぜ、彼女は縛られている?」
娘かどうかは、最悪もう一度調べ直せばいい。
それより、この異様な光景の説明が欲しかった。
本当はすぐにどちらも殺してしまえば解決する。
この少女が娘であれば、なおのこと殺すしかない。
それでも、聞かずにはいられなかった。
なぜなら、縛られている少女はずっと天井を見たまま
こちらをちらりとも見てこないのだ。
突然扉が開けば、驚いてこちらを向くはず。
男性が脅されていれば、恐怖にゆがむ顔をするはず。
だが、横たわる少女はどちらの反応も示さず
ただそこに横たわっているだけだった。
あまりにも、異様だった。