第1章 出会い
一階を隈なく捜索したが、客人の姿はない。
まさか、部下の見間違い?
いや、そんなはずはない。
後は二階を捜索してみるしかない。
面倒なことになったと、彼はふぅっと小さくため息をつく。
玄関の前にどんと構えられている大きな階段。
ゆっくり、音を立てないようにそこを上っていく。
大体、ここの家主はなぜ客人を放っているのだろう。
ゲストルームは一階にあったが、使われている形跡はない。
よほど親しい友人なのか、はたまた親族か?
だが、この夫婦を調査したところによると
親族はみな海外に在住しており、数年はコンタクトをとっていない様子。
更に掘っていくと、絶縁しているという事まで調査出来た。
友人くらいはいるだろうが、頻繁に会う友人もいないことも調べはついている。
そのため、他にターゲットはいないものとして
この夫婦だけ始末するという結果になったのだ。
なのに、なぜ決行の日にこんな事に…。
「まったく…」
つい出てしまうつぶやき。
緊張状態を保ったままは、中々辛いんだぞ。と心の中で愚痴を吐きながら、ゆっくりと進む。
ガタンッ
「……!?」
二階の階段を上がったすぐの部屋。
階段からそこを見てみると、少しだけ明かりが漏れている。
真っ暗な屋敷に、扉の下から漏れる明かりがまるで誘っているように彼の目には映った。
音の出所もここだろうか。
銃をグッと握りしめ、扉を睨みつけながら階段を上がっていく。