第57章 バタービール
大広間へ足を踏み入れた瞬間、ミラたちは思わず足を止めた。
見上げれば、何百ものくり抜かれたかぼちゃが宙に浮かび、その中で揺れる蝋燭の灯りが辺りをあたたかな橙色に染めている。天井近くでは生きた蝙蝠の群れが羽音を立てながら飛び交い、時折、生徒たちの頭上すれすれを掠めていった。
荒れ模様の空を映し出す魔法の天井の下には、燃えるようなオレンジ色の吹き流しが幾筋もたなびいている。その姿はまるで鮮やかな海ヘビのようにくねりながら大広間を泳ぎ回り、ハロウィーンの祝祭を楽しんでいるかのようだった。
長机には色とりどりのご馳走が並び、あちこちから弾んだ笑い声が聞こえてくる。
昼間の出来事や胸の中に残るわだかまりさえ、今だけは少し遠く感じられるほど、大広間は華やかな熱気に満ちていた。
ミラは小さく息を吐くと、隣を歩くハリーたちへ視線を向けた。
「……ハロウィーンって、やっぱりすごい」
そう呟きながら、揺れるかぼちゃの灯りの下へ足を進めた。
テーブルに並べられた食事も素晴らしいものばかりだった。
ミラはカボチャスープを飲むと、カボチャの優しい甘みが口いっぱいに広がり、体が芯から温まるような気がした。三本の箒でバタービールが気軽に飲めなくなったと分かった時はショックだったが、暖かいカボチャスープがそれを少しだけ忘れさせてくれた。
ハリーが時々ルーピン先生を心配そうに見ていたが、ミラが見る限り、ルーピン先生は毒を盛られた様子はなく、隣の席のフリットウィック先生と何かを活発に話していた。
宴の締めくくりは、ホグワーツのゴーストたちによる余興だった。
最後の拍手と笑い声が大広間に響き渡ると、生徒たちはそれぞれの談話室へ戻ろうと、一斉に出口へ向かい始めた。
「ポッター、ディメンターがよろしくってさ!」
人混みの中からドラコの声が飛んできた。
「うるさいぞ、マルフォイ!」
ロンがすぐさま怒鳴り返したが、ハリーは小さく肩をすくめるだけだった。
「放っておこう、ロン」
「でも――」
「本当に平気だから」
ハリーはそう言って歩き続ける。ミラは思わずドラコの方を振り返った。クラッブとゴイルを従えたドラコも、ちょうどこちらを見ていた。