第57章 バタービール
「マクゴナガル先生。すぐにフィルチ管理人のところへ行って、城中の絵の中を探すように言ってくださらんか」
「承知しました」
マクゴナガル先生はすぐに踵を返した。
その時だった。
「見つかったらお慰みだねぇ!」
甲高いしわがれ声が廊下に響いた。
生徒たちが一斉に見上げる。
「ピーブス……」
頭上では、ポルターガイストのピーブスが楽しげに漂っていた。大惨事や騒動が何より大好きな彼は、ニヤニヤと笑いながらくるくる宙返りしている。
まるで最高の余興でも見つけたかのようだった。
「ピーブス。どういうことかね?」
ダンブルドア校長が静かに問いかける。
すると、さすがのピーブスも笑みを少しだけ引っ込めた。ダンブルドア校長の前では、いつものように好き勝手できないらしい。
「ええ、見ましたとも!」
ピーブスは得意げに言った。
「太った婦人は泣き叫びながら、あっちこっちの風景画を逃げ回っていましたよ!」
「おかわいそうに」と、白々しく付け加えた。
「婦人は、誰がやったか話したかね?」
ダンブルドア校長の問いに、ピーブスはくるりと一回転した。
「ええ、確かに。校長閣下」
そして、自分の足の間から逆さまにダンブルドア校長を見つめ、ニヤニヤと笑った。
「そいつは、婦人が中に入れてやらないんで酷く怒っていましたねえ」
ピーブスの笑みが、さらに大きくなる。
「あいつは癇癪持ちだねえ----あのシリウス・ブラックは」
その名前が告げられた瞬間、廊下にいた誰もが息を呑んだ。
まるで冷たい水を頭から浴びせられたかのように、全身から熱が引いていく。
シリウス・ブラック。
アズカバンを脱獄した、あの危険な殺人犯。
ほんの少し前までハロウィーンの余韻に包まれていた廊下は、凍りついたような静寂に支配されていた。
ミラは無意識に、隣にいるハリーの顔を見た。
胸の奥で、嫌な予感が静かに広がっていくのを感じながら。