第57章 バタービール
三人はそのままホグズミードの通りを歩き続けた。
しばらくしてスリザリン生たちの姿が見えなくなると、ハーマイオニーが大きくため息を吐いた。
「もう……よりにもよってスリザリンとぶつかるなんて。今日はついてないわ」
「確かに」
ミラも肩を落とした。
「酒に弱いなんて知られたら、絶対笑いものになるよ……」
「それもそうだけど」
ハーマイオニーはすぐに言った。
「あなたはもっと気をつけるべきよ」
「?」
ミラは首を傾げた。隣のロンも同じ顔をしている。
「何が?」
「何がじゃないわよ」
ハーマイオニーは呆れたように額を押さえた。
「あなた、自分がどう見られてるか全然わかってないの?」
「え?」
「この間言ったわ。ミラ、あなたは顔がいいのよ」
ハーマイオニーはきっぱり言った。
「わからないの?」
ミラはぽかんとした。ロンはさらにわかっていない顔をしている。
「何が問題なんだ?」
ハーマイオニーは信じられないものを見るような目をロンへ向けた。
「だってさ、トロールとやりあうような女子を女子って呼んでもいいのかな」
「ロン!」
ハーマイオニーが叫んだ。
しかしその瞬間――
「ぷっ」
ミラが吹き出して、肩を震わせながら笑い出した。
「あははっ……!」
「え?」
ロンが目を瞬かせる。
ミラは目尻に涙を浮かべながら笑っていた。
「ロン……っ」
「な、何だよ」
「あなた、そういうところ本当に面白い、最高!」
ミラはお腹を押さえながら言った。
「普通そんなこと真顔で言う?」
「本気で言ったんだけど」
「だから面白いんだよ!」
また笑いが込み上げる。さっきまでの気分の悪さや落ち込みが、少しだけ遠のいていく気がした。
ハーマイオニーは呆れた顔で二人を見た。
「あなたたち、本当にもう……」
そう言いながらも、口元には小さな笑みが浮かんでいる。ロンは納得していない様子だった。
「いや、だって本当だろ? 一年の時にトロール相手に――」
「もういいから」
ハーマイオニーが即座に遮った。ミラはまだ笑っている。秋風が吹き抜け、三人のローブを揺らした。
少なくとも今だけは、酒に弱いことが少しだけどうでもよく思えた。