第57章 バタービール
どうやら、この話題は当分の間ロンに弄られ続けるらしい。そう思うと余計に気が重い。だが、そんなミラの様子を見ていたハーマイオニーは少しだけ微笑んだ。
「少なくとも、無理して平気なふりをしなかったのは良かったと思うわ」
「……倒れたんだから、平気なふりも何もないよ」
「それでもよ」
ハーマイオニーは優しく言った。
「具合が悪い時は、人に頼っていいんだから」
ミラは一瞬だけ黙った。
それから視線を逸らし、小さく肩をすくめる。
「……覚えておく」
素直とは言い難い返事だったが、ハーマイオニーは満足そうに頷いた。ロンはそんな二人を見ながら、にやにやしている。
「でも本当に驚いたなぁ。今度フレッドとジョージに話したら――」
「ロン」
ミラが低い声で言った。
「言ったら?」
アメジスト色の瞳がじっと向けられる。まだ少し顔は赤いままだったが、その視線だけは妙に鋭かった。ロンは即座に首を振った。
「言いません」
「その方が身の為だぞ」
ミラは満足そうに頷いた。
その直後だった。
反対側から歩いてきた数人のスリザリン生の集団とすれ違おうとした時、誰かの腕がミラの肩にぶつかった。
「っ――」
ただでさえ足元がおぼつかない状態だった。
バランスを崩したミラは、そのまま後ろへよろめく。
「いっ!」
ドサリ、と石畳の上に尻もちをついた。
「ミラ!」
「大丈夫!?」
ロンとハーマイオニーが慌てて駆け寄る。ミラは顔をしかめながら立ち上がろうとした。
「大丈夫、これくらい…」
「悪い」
低い声が聞こえた。
「あ?」
誰だろうと、ミラは相手をすごんで見上げた。