第57章 バタービール
三本の箒亭を出る頃には、ミラの顔色も少し落ち着いていた。
とはいえ、本調子には程遠い。
足取りはしっかりしているものの、頭の奥にはまだふわふわした感覚が残っていた。冷たい秋風が頬を撫でるたびに多少は楽になるが、それでも身体が妙に重い。ミラは深いため息を吐いた。
「最悪だ……」
「いや、でもさ!」
隣を歩いていたロンが勢いよく振り向く。
「まさか君がお酒に弱いなんて!」
「うるさいなぁ…」
「だって君だぞ!?」
ロンは信じられないものを見るような顔をしていた。
「喧嘩も強くて、トロールとも戦ったし、ほとんどの授業だって上位だし、魔法だって僕らよりずっと上手いのに!」
「だから何……」
「半分のバタービールでダウンしたんだぞ!?」
ロンはとうとう吹き出した。
「君でも弱点はあったんだ!大発見だよ!」
ミラは半眼でロンを睨んだ。しかし今は睨みにも迫力がない。頭が重いせいで、むしろ不機嫌な猫のようだった。
その様子を見て、ロンはさらに笑いそうになる。
「ロン」
ハーマイオニーが呆れた声を出した。
「笑うのはやめなさい」
「だってさぁ!」
「ミラは困ってるのよ」
ハーマイオニーはそう言うと、ミラの顔を覗き込んだ。
「体質なら仕方ないわ」
「……」
「恥ずかしいことじゃないもの」
「でも、一杯も飲めてない……半分だ」
ミラは項垂れた。
「マダム・ロスメルタにも珍しいって言われたし……」
「珍しいだけよ」
ハーマイオニーはきっぱり言った。
「魔法が得意でも苦手なことはあるわ」
「そうそう」
ロンも頷く。
「僕だって蜘蛛は嫌いだし――」
「それと一緒にしないで」
「なんで!?」
ミラはまたため息を吐いた。