第57章 バタービール
「大丈夫? 気分悪い?」
「わかん……ない……」
ミラはゆっくり顔を上げようとした。しかし頭が鉛のように重い。視界も少しぼやけている。
なんとか顔だけ持ち上げて、焦った顔のハーマイオニーを見た。
「ハーマイオニー……?」
「そうよ、私よ」
ハーマイオニーは少し安心したように頷く。
「どこか痛い?」
「いたくは……ない……」
ミラは瞬きを繰り返した。頭がぐらぐらする。考えがまとまらない。それに妙に眠いのは何故だろう。
「なんで……こんな……」
自分自身でも状況が理解できなかった。一体自分に何が起こったのか。毒でも盛られたのだろうか?
そこへロンが戻ってきた。
「水持ってきた!」
大きなコップを抱えている。
その後ろから、店主のマダム・ロスメルタもやって来た。
「どうしたのかしら?」
ロスメルタはミラの顔を見るなり、少し目を丸くした。
「あらまあ」
彼女は屈み込み、ミラの顔色を確認する。
「顔が真っ赤ね」
「急にこうなったんです!」
ハーマイオニーが説明した。
「病気でしょうか?」
「いいえ」
ロスメルタはすぐに首を振った。
「たぶん違うわ」
そしてテーブルの上に残っているジョッキを見た。
「バタービールはどれくらい飲んだの?」
「まだ半分ぐらいしか…」
ハーマイオニーが答えると、ロスメルタは一瞬黙った。
それから少し困ったように笑う。
「それなら、おそらく酔ってるのね」
「酔ってる!?」
ロンとハーマイオニーの声が重なった。
「バタービールで?」
「ええ。滅多にいないけれど、たまにいるのよ」
ロスメルタはミラを見ながら説明する。
「生徒の中には少量のアルコールでも酔ってしまう子がいるの」
ミラはぼんやりと顔を上げた。
「よっ……てる……?」
「そうみたいね」
ロスメルタは優しく答えた。
「でも、半分でここまでなるのはかなり珍しいわ」
ロンは信じられないという顔をした。
「一杯も飲んでないのに?」
「アルコールに耐性がないのかもしれないわね」
ロスメルタは苦笑する。