第57章 バタービール
三人がそれぞれの店の話をしているうちに、ジョッキの中のバタービールは少しずつ減っていった。
ハーマイオニーは買った本の話を熱心に続け、ロンは相槌を打ちながらも、時折ロスメルタのいるカウンターへ視線を向けている。
そんな中、ミラは妙な感覚を覚えていた。
(……あれ?)
異変に気が付いたのは、身体が熱いと感じた時だった。三本の箒亭は暖炉が焚かれているとはいえ、ここまで暑かっただろうか。頬がじんじんするし、頭もフワフワする感覚にミラは目を細めた。
ミラはジョッキを持ったまま瞬きをし、空いている手で頭を抑えた。
「ミラ?」
最初に異変に気付いたのはハーマイオニーだった。
「顔、赤くない?」
「…?」
ミラはぼんやりと顔を上げた。
「……そう?」
「そうよ。かなり赤いわ」
ハーマイオニーは驚いたように身を乗り出すと、ロンもようやくミラを見る。
「うわ、本当だ。どうしたんだ?」
「わかんない……」
自分でも驚くほど声に力が入らない。頭がぐらぐらする。身体から力が抜けていくような感覚があった。
「熱でもあるの?」
ハーマイオニーが心配そうに額を覗き込む。
「ない……と思う……」
ミラはこめかみを押さえた。
指先まで妙に重い。何かがおかしい。けれど、何がおかしいのか考えようとしても頭が上手く回らなかった。
「……あれ」
椅子から立ち上がろうとして、身体がふらりと傾く。
「ミラ!」
ハーマイオニーが慌てて腕を掴んだ。
「大丈夫!?」
「うん……たぶん……」
たぶん、と言った本人が一番信用できない顔をしていた。視界がゆっくり揺れている。暖炉の火も、人々の声も、どこか遠く感じた。
ミラは再び頭を押さえる。