第9章 【第六講】留年するなら三年生で生徒会長になるのもアリかもね
「志村くんも大変だねー」
生徒会長選挙、投票日まで残り二日。
今日の○○は新八と共にお昼ご飯をとっている。
珍しい組み合わせだ。
「大変ですけど、充実しています」
そのメガネは一点の曇りもなく輝いていた。
新八は姉に勝手に立候補の届出をされ、不本意ながら生徒会長選挙に巻き込まれてしまった。
だが、なんというか、生きている実感がする。
3Zの強烈な個性に埋もれて学生生活を送っていた新八は、今初めて脚光をあびている。ような気がしている。
「私、志村くんに投票しようかなァ」
「え、そんな、僕なんて、そりゃ、嬉しいですけど……」
風紀委員は全員、近藤の派閥。
そう思っていた新八は、○○の一票など期待していなかった。
「近藤さんを応援したいのはヤマヤマだけど、正直言って、アレが生徒会長の学校なんて入学したくないし」
○○は我が風紀委員長のことをボロクソに貶す。
断っておくが、○○は近藤のことを慕っている。はずだ。たぶん。きっと。
「その点、志村くんなら人畜無害無味無臭。地味で頼りなさそうだけど、やるときゃやるし(寺門通絡み限定)、何よりマジメでしょ」
誰よりも生徒会長にふさわしいと、○○はおむすびをくわえながら力説する。
「立候補者の中の誰よりも、志村くんが適任だよ」
生徒会長選挙には近藤の他、3Zからは新八、桂、九兵衛が立候補した。
○○に断られた桂は自ら立候補した。
――俺が当選した暁には、俺と○○殿のよりよい学生生活を確約するぞ。
桂は○○にそう宣言したが、桂が当選しようがしまいが確約されているのは○○に対する嫌がらせのような日々だけだろう。
さらにはエリザベスまでもが桂を裏切り、立候補していた。