第20章 【第十六講】『やっぱり』猫『が好き』
「トシ、ハウス」
○○は土方の席を指し示した。
「犬扱いすんじゃねェ」
土方の席に指を向けたまま、○○はその向こう側の席に目を向けた。その席の主、高杉は不在。
高杉一派の連中は体育館から戻る途中にいなくなってしまった。
どうやら、健康診断を受けるために高杉は朝から教室に来たようだ。
「トシ、ハーウス」
○○に便乗し、からかうように沖田も指を差す。
「テメェにトシ呼ばわりされる筋合いはねェ」
「へえ。それだと、○○には呼ばれていいって言ってるように聞こえますね」
ニヤニヤと返され、土方は返答に窮する。
むしろ呼ばれたい、などと見透かされては堪らない。
沖田の表情を見ると、すでに見透かされているようにも思える。
「トシ! ちょっといいか!!」
「トシトシうるせーな!!」
土方は声を荒げる。
誰も彼もが、自分をからかっているような疑心に捕らわれている。
「え? すまん……」
とんだとばっちりを受けた近藤は哀しげな声を漏らす。
【第三講 前半】『小説版に時系列なんて最早ない』に話は続く。