第9章 【第六講】留年するなら三年生で生徒会長になるのもアリかもね
「志村くんは部活やってなかったの?」
「入りたい部活もありませんでしたからね」
廊下を歩きながら、○○と新八は他愛のない会話をする。
「剣道部は?」
「うーん、体を動かすのはあまり得意ではないし……」
「剣術道場の息子なのに?」
「いや、その設定、ここの世界にも存在するんですか……?」
「知らない」
この世界において妙と新八はどこに住んでいるのか、両親は健在なのか、空●も知らない誰も知らない。
「じゃあ、メガネ部とか」
「どんな活動するんですか、その部」
「テレビゲームとか推進して、学校中の生徒の視力を落とす活動とか」
「はた迷惑な部活ですね」
教室の前までたどり着き、新八は引き戸を開けた。
そこで○○の目に飛び込んだのは、大きな赤ダルマ。
「近藤勲に清き一票を!」
ダルマの着ぐるみを着た近藤が教壇に立っていた。
「近藤さん、生徒会長選挙に立候補してるの?」
桂に推薦された前日の放課後のことが思い出される。
新八は三年生が立候補していることがおかしいだろうとツッコミを入れているが、○○はそのことには触れない。
銀魂高校に、3Zの生徒にそんな一般的な感覚がないことなどわかりきったことだ。
「ま、それに近藤さんはあと一年半も高校生活があるからね。今生徒会長になっても、長く任務を全う出来ますよ」
○○の言葉に疑問を持ったのは、当の近藤本人。
「え、どゆこと?」
「近藤さん、留年するんですよね」
近藤の成績は恐ろしく低空飛行。どの教科も落第点。
唯一満点なのは、保健体育の受精の仕組みのみ。
このままでは留年の可能性があると、○○は銀八に聞いた。
「いやいやいや! 俺、何も聞いてねーけど!?」
本人が知らないことを、どうして○○が知っているのか。
「知ってて立候補してるのかと思いました」
クラスメイトの成績を握っているのは、銀八からいろいろと聞いている○○のみ。
○○と一心同体だと思っている銀八には、プライバシーも何もあったものではない。
「まァ、まだ半年あるんだし、頑張れば留年は回避できるんじゃないですかー」
近藤が留年しようがしまいが、○○の知ったことではない。