第9章 【第六講】留年するなら三年生で生徒会長になるのもアリかもね
翌朝、朝練を終えた○○は階段でクラスメイトと遭遇した。
「志村くん、おはよー」
志村新八。
3年Z組のツッコミ担当。
志村くんという呼び名が新鮮というか慣れないが、それでも彼は志村新八である。
「□□さん、おはようございます。朝から精が出ますね」
○○は手拭いで汗を拭っていた。
新八は登校して来たばかりだが、○○はとっくに学校内にいた。
「大会が近いんだ」
○○は小一時間程武道場で汗を流して来た。
「部長だし、何かと大変ですよね」
「大変だよ、何かと」
○○が剣道部に入部したのは、自身の部屋に残されていた剣道に関する品々を見てのことだった。
胴着や竹刀はもちろんのこと、中学時代の部活仲間との写真、大会で得たトロフィーや賞状。
部屋を占めるほとんどが剣道に関するものだった。
見学の日、一応は経験者ということで、○○は部員と立ち合いを行った。
竹刀を握った○○は無双だった。
記憶はないが、自然と体が動く。部員達を悉く打ち倒した。
銀魂高校剣道部は平凡そのもの。女子にも男子にも、○○に歯が立つ相手はいなかった。
この人、見学に来たの? 道場破りならぬ部活破りに来たの?
と部員が思い始めた頃、○○のことを思い出した生徒がいた。
中学以前から剣道を習っていた部員の中には、○○の名を知る者もいた。
○○自身は覚えていないが、同じ種目に携わる人達の記憶には残っている選手であった。
大物剣士の登場に銀魂高校剣道部は湧き立ち、祭り上げられた○○は入部早々部長に就任することになってしまった。