第8章 【第五講 後半】文化祭といえばライブがつきもの●け姫
やれやれと、近藤は息を吐く。
「ま、何はともあれ、事件は解決だな」
これでやっと一息つけると言いながら近藤は去って行った。
その前方には妙の背中が見える。
「はぁぁぁぁ」
○○は盛大に溜め息をつく。
担任とロン毛のせいで、危うく大ケガを負う所だった。
ん? と○○は顔を上げる。
「そういえば、桂くんはどこ行った」
元はといえば、危機に瀕したのはあの男が原因だ。
「桂なら、あそこだ」
土方が親指で後方を示す。
見えた桂は未だに猿ぐつわをされた状態だった。
先程はヘドロに羽交い絞めにされていたが、今度はエリザベスが桂の上に跨っている。
○○の元へ駆けつけたいようだが、その状態では為す術がない。
エリザベスと視線が合うと、彼は○○に向けて右手を上げた。
サムズアップの仕草を見せている。
エリザベスも桂の暴挙については思う所があったらしい。
○○もエリザベスに親指を立てて見せる。
通じ合う○○とエリザベス。
一発ブン殴ってやりたい所だったが、桂の処遇はエリザベスに任せてよさそうだ。
「あ、そうだ」
ふわりと○○は微笑んだ。
「土方くん、さっきはありがとう」
銀八がサンダルを飛ばした時、土方が名前を呼んでくれなければ、顔を上げなかった。
塩酸に焼かれずに済んだのは土方のおかげだ。
「べ、別に、礼を言うよーなことじゃねーだろ」
土方は目をしばたたかせる。
「何、ガラにもなく照れてんですかィ」
「照れてねーよ!!」
土方の怒声を耳にしながら、○○はステージから飛び降りる。
「ねェ、お通ちゃんのライブが始まるまで、屋台とか回らない?」
「あ?」
土方はむず痒いような、落ち着きのない表情を見せる。
「何言ってんだ、俺等には風紀委員の仕事があんだろ」
お決まりの言葉に○○は呆れたように吐息を吐く。