第8章 【第五講 後半】文化祭といえばライブがつきもの●け姫
「ケガはないか? □□」
ステージ下へとやって来た近藤は心配そうに○○に声をかける。
「うん、大丈夫」
未だ心臓は早鐘を打っているが、五体満足だ。頭も焼け焦げずに済んだ。
近藤の横にいた土方はステージ上を睨み上げる。そこには銀八がいる。
「先生、□□が危ねーってわかるでしょう」
その言葉に○○は首を傾げる。
顔を上げた時、男の顔面を直撃したものが銀八が飛ばしたサンダルだったと、○○は知った。
銀八がサンダルを飛ばしたことで男は反射的に塩酸を落としてしまった。
塩酸は○○の頭上にあった。
瓶の落下に気づかなかったら、塩酸は○○の頭を焼いていた。
危険極まりない。
「○○なら気配察して避けられんだろ。だからやったんだ」
当たり前のように銀八は言うが、当の○○は眉をひそめる。
「全然。さっぱりちっともこれぽっちも気づかなかったんですけど」
買い被りもいい所だ。
「気づかねーのか? 向こうの○○とはちげーんだな」
「向こうってどこですか」
ガシガシと、銀八は髪を搔きむしる。
「ま、こーしてみんな無事で済んだんだ。終わり良ければ全て良しとしよーや」
「良くありません。危うくあたま焼野原になる所だったんですよ」
「○○の頭が焼野原でも、俺は構わねーぜ」
「私が構うわ!!」
○○の声など気に留めず、銀八は校舎の方へと歩いて行った。