第8章 【第五講 後半】文化祭といえばライブがつきもの●け姫
「いいのか、理事長。アンタが一言、未来永劫文化祭をやらねーって約束すれば、丸く収まるんだぜ」
男は○○の頭上で塩酸を揺らしている。
「ここに垂らしたらどーなるんだろーな?」
塩酸がなんだ。こちとら車に轢かれて一回脳ミソぶちまけとるんじゃァァ、って嘘ウソ。そんなことはないけど。
塩酸がなんだ。髪の毛なんてまた生えてくる。いやでも河童は嫌だ。つか皮膚も溶けるよね。
うがああああ。
と、○○は脳内で叫ぶ。
傍目に見れば落ち着いて見えているだろうが、その内実は取り乱している。
伏せている○○からは男が見えないため、いつ天から塩酸が降ってくるかわからない分、恐怖が増す。
河童になったらあの長髪も全部むしってやるからな、バカツラ!!
と、捨て鉢になっている○○の耳へ、
「ったくよー、映画に集中できねーよ」
この場にふさわしくない気の抜けた声が届いた。
姿を見なくてもわかる。担任、坂田銀八の声だ。
銀八の問いかけにより、男が文化祭を憎む理由が判明した。
高一、高二、高三と、文化祭準備期間でクラスの女子に惚れ、告白したが三度ともフラれた苦い思い出。
「文化祭のバカ!」
○○の頭上で響く男の声。