第8章 【第五講 後半】文化祭といえばライブがつきもの●け姫
確実に捕らえるにはもう少し近づく必要があったが、桂のせいで台無しだ。
「動くな」
○○の作戦は失敗した。
さすまたは男に届かなかった。
「地面に手を付いて座れ」
○○は言われた通りにする。
通を人質に取られている以上、逆らうことは出来ない。
「ナメた真似してくれんじゃねーか」
通の顔に塩酸を近づけたまま、男は○○に近づいた。
「この女の前に、まずはお前だ」
男はターゲットを○○に変更した。
「やめろ!」
「テメェ、いい加減にしやがれ!!」
「黙れ!!」
近藤と土方は男の一喝で押し黙る。
「○○殿を離せ!!」
さらには後方から桂の声。
○○のピンチに駆けつけて来ないのは意外だと思いきや、ヘドロが巨体で押さえ込み、さらには妙が長髪を鷲掴みにしていた。
彼等がいなければ、男の静止も聞かずに桂はステージへと駆けつけ、最悪の結果を引き起こしていたに違いない。
「黙れって言ってんだろうが!!」
「○○殿に危害を加えるようなら俺は貴様を許しはせん! 必ずやその息の根を止むごっ」
口を閉ざさない桂に業を煮やし、長谷川が手を出した。
ポケットに差し込んでいたタオルを外し、桂に猿ぐつわを噛ませる。
このまま桂が長髪を、いや、挑発を続けていては、腹を立てた男がいつ塩酸をぶちまけるともわからない。