第8章 【第五講 後半】文化祭といえばライブがつきもの●け姫
「みんなー、盛り上がっていこうねクロマンサー!」
午後二時を過ぎ、文化祭のメインイベントである寺門通のライブが始まった。
新八が親衛隊長を務める人気アイドルだ。
会場は満員電車さながらの混雑具合。
手を振り上げて熱狂的に声を上げる者、笑顔を浮かべて拍手をする者、真顔でステージを見つめる者。
ファンもそうでない者も入り乱れ、会場は狂騒の場と化している。
この中に、文化祭をぶち壊そうとする不逞の輩が潜り込んでいるのだろうか。
○○が客席を見回していると、思いの外、早くに事件が起こった。
歌の途中で突然音楽がやんだ。
それだけではない。通を照らしていた明かりも消えている。
「これは……」
今まで悪事を働いていた輩の仕業なのだろうか。
生徒ひとりひとりをターゲットにしていたこれまでとは趣が変わっている。
だとすれば、狙いは……
○○が前方に目を向けたと同時に、一人の男がステージ上へと駆け上がった。
男はバンドメンバーに消火器を噴射した後、通を人質に取って声を上げた。
「理事長を呼んで来い!」
ステージ上には通と男だけが残されている。
客はステージから遠ざかり、新八だけがステージの真下に残っている。
通のピンチにお通ちゃん命の新八が逃げるはずはない。
その新八の横に近藤、土方、沖田といった風紀委員の面々も並ぶ。
さらには理事長お登勢も姿を見せた。
○○は群衆の背後へと抜けた。
男に見つからないように身を屈め、一目散に走った。