第20章 【第十六講】『やっぱり』猫『が好き』
「土方くん、行くよ!」
「俺!?」
突然の指名に土方は動揺する。
生活習慣病を学ぶための劇だ。題目がロッ●ーということはあるまい。
「トシー! 朝ごはんだよー!」
ステージから○○が呼ぶ。
朝ごはん! やはり夫婦役! しかもトシ!!
「おはよう……○○ッ……」
便乗し、下の名前で呼ぶ。
一つ屋根の下の疑似体験。心にサボテンの花が咲く。
嫌いな相手を旦那役にはしないだろう。少しは脈があるのでは?
――などと思った土方は、数秒後に自分の浅はかさを思い知らされた。
「たんとお食べ」
一つ屋根の下ではなく、土方の住処は隣の小さな小屋だった。
「トシの好きなマヨネーズだよー」
「なんで犬だ!」
犬役は不満だが、土方くんではなくトシと呼ばれることには悦びを感じている土方である。
「昼ごはんもマヨネーズだよ。夜ごはんもマヨネーズだよ」
ここで○○は声のトーンを落とした。
「そうして、トシは死んでしまいました」
肩を落としながら、生徒達に向かって質問をする。
「さて、どうしてトシは死んでしまったのでしょうか?」
「そりゃ死ぬだろ! 犬にマヨネーズ食わせればな!!」
答えたのは観客ではなく、一緒に寸劇をしている土方だ。