第19章 【第十五講】大人しく監視される不良には裏がある
○○の刀が弾かれ宙を舞った。
高杉の刀は真っ二つに折れた。
相討ち。
土方は口の端をピクピクと引きつらせている。
折れた刀は土方のすぐ横を通り抜け、武道場の壁にぶっ刺さった。
「惜しい。もうちょっとで不慮の事故死になったってのに」
沖田がちぇっと舌打ちをする。
自分の手を汚すことなく、副委員長が世を去ってくれる機会を逸した。
「ありがとうございました」
一歩下がり、○○は立礼をする。
日本刀での立ち合いでも、終わりの作法はきちんとする。
「あれ? みんなは?」
集中力を解した○○は、いつの間にやらギャラリーが消えていることに気づいた。
いるのは土方と沖田だけ。他の3Zの生徒、銀八ら教師陣、中学生達の姿はなかった。
「何分立ち合ってたと思ってんだ。とっくに模擬授業に移ったよ」
「三分くらい?」
「十分だ」
「うっそだー」
「嘘じゃねェ」
○○の体感では短かったが、実際は長かった。
互角の戦いを繰り広げた死闘はなかなか終わらなかった。
「高杉」
ツカツカと土方は高杉に歩み寄る。
その目には明確な敵意が含まれている。
「プレハブ小屋に戻るのか? それとも、点数稼ぎに模擬授業の手伝いでもするか?」
土方は嘲笑うように口角を上げている。