第19章 【第十五講】大人しく監視される不良には裏がある
「俺が何をしようがどこに行こうが、テメーの知ったこっちゃねェ。それとも、俺に興味でもあんのか?」
土方同様、高杉も口角を上げている。
双方、互いを見下す笑いだ。
「俺達には、テメェらを見張る義務があんだよ」
プレハブ小屋には近藤が残り、高杉一派の他の生徒を監視している。
きっと無視されているか、バカにされているかのどちらかだろうが。
「相変わらず、くだらねェ奴等だな」
「あ? もう一立ち合いするか?」
バチバチと火花を飛ばし合う。
一触即発の状況を打開したのは、グーっという腹の音。
土方と高杉は視線を外し、音の出所に目を向けた。
「神経、使いすぎた」
○○はお腹を押さえる。
張り詰めた空気が霧消し、土方は溜め息を吐く。
「テメェには緊張感ってもんがねーのか?」
「仕方ないでしょ。お腹空いたんだから」
「風紀委員は食わねど高楊枝って言うだろ。空腹くらい耐えろ」
「何それ!? 聞いたことないんだけど!」
今度は○○と土方の間で火花が飛び合う。
一触即発の状況を打開したのは、またもやグーっという腹の音。
○○と土方は音の出所に目を向けた。
「腹の音がうつるってのは、本当だな」
そこにいたのは高杉だ。
ずいぶん前に高杉が「腹減ったな」と言っていたことを思い出し、○○は口元を緩めた。
「お腹空いたね」
「腹も減ったし、そろそろ帰るか」
「中学生に手出ししないよね?」
「ガキにかまけてる程、暇じゃねーよ」
高杉は悠々と武道場を後にした。
「土方さん、義務、忘れてますよ」
高杉と○○が腹で通じ合っている――
土方は謎の敗北感に苛まれている。
【第十六講】へ続く→