第19章 【第十五講】大人しく監視される不良には裏がある
部活紹介は最悪のまま終了、と思ったが、銀八の脳裏にある部活動が浮かんだ。
「いや待て、一つあるじゃねーか。まともな部が」
主将がここにいる。
それも、相当腕の立つ玄人だ。
「皆さん、模擬授業の前に剣道部を見学に行きましょう!」
銀八の言葉に○○は「えっ?」と声を上げる。
「剣道部ですか?」
「そーだよ」
銀八はコソコソと○○に話しかける。
「一つくらい、まともな部活見せとく必要があんだろ?」
軽い立ち合いでもいいから見せてくれと、銀八は○○に頼んだが、○○は首を振った。
「無理です。出来ません」
「何でだよ」
「今日は誰も部活に出てないんで。一人じゃ立ち合い出来ません」
きっぱりと言い放たれ、銀八は声を荒げた。
「なんで一人も部活出てねーんだよ! テスト期間かなんかだっけ? 今!」
野球部は遠征試合で不在、サッカー部は合宿で不在、ロボット研究部は全員で大声コンテストに出場しに行っていて不在、そして今度は剣道部が不在。
狙ったように学校から消えている部員達。もはや学校内にいる生徒は3Zの生徒だけなのではないかと疑われる。
「Aさんは塾、Bさんはピアノ教室です。Cくんは親御さんの仕事の都合がつかないので妹さんを幼稚園まで迎えに行くそうです。Dくんは体育の授業で捻挫、Eくんは風邪、Fくんは頭痛でそもそも今日は欠席です。Gさんは――」
「一人一人理由が違げーのかよ! じゃあもういいよ、面倒臭ェ!! つーか、全部把握してるお前はすげーよ! 部長の鑑だよ!!」
延々と続く本日の部員不在の理由に辟易し、銀八はとどめた。
部活は諦めて模擬授業に移るしかないかと諦めかけたが、
「その立ち合い、俺にやらせろよ」
思わぬ所から立候補者が出た。高杉だ。
銀八は疑惑の目を向けた。
「お前、陶芸部みたいにぶっ壊すつもりじゃねーだろーな?」
「そんなつもりはねーよ」
高杉は○○と目を合わせ、口角を上げた。
差し詰め、先程の睨み合いの延長戦。
高杉と手合わせ――○○は心を躍らせる。
「先生、行きましょう。武道場に……!」