第19章 【第十五講】大人しく監視される不良には裏がある
「体験入学ですか?」
「そうだ」
二週間前のお昼休み。
職員室へと呼び出された○○は、銀八から頼みごとをされた。
今度、中学生に向けた一日体験入学を行うことになり、その手伝いを3Zの生徒にもさせたいというのだ。
だが、自分が言っても生徒達がすんなり聞くとは思えない。
そこで、○○に白羽の矢を立てた。
風紀委員の○○ならば、学校のためとあらば応じてくれるだろう。
そして、○○からクラスメイトを説得させる。
風紀委員は軽く取り込める。そうして徐々に皆を巻き込む寸法だ。
銀八は体験入学の意義を淀みなく語った。
普段の銀八からは見られない熱意だが、このイベントを成功させればボーナスをやると理事長から言われている。
金が絡むとこの男は本気を出す。
「それによ、厄介な奴等もいんだろ」
「厄介な奴等?」
○○は首を傾げる。
「高杉達だよ」
体験入学に来た中学生に対し、恐喝、カツアゲすらしかねない。
なんとしても、大人しくさせておかねばならない。
「風紀委員の連中に見張っててもらわねーと」
「私が……あ、いえ、私達が、高杉くんを……あ、いや、高杉くん達を見張るんですか?」
○○は心を弾ませる。
普段は接点がなく、高杉が教室に現れたときくらいしか顔を合わせることもない。
高杉から話しかけてくることもなく、○○から話しかけることもない。
ただ、同じ空間にいるだけだ。
「面倒臭ェだろーが、学校のためにいっちょ頼むわ」
「任せてください!」
○○はドンと胸を叩いた。
「え、ウソ? やんの?」
最終的には引き受けてくれるだろうが、こんなにあっさりいくとは思っていなかった。
「風紀委員として、学校に貢献することは当然のことです。精一杯、務めさせていただきます!」
見張りの名目なら、憚ることなく高杉と関われる。
近藤や土方は必要ない。これは自分の任務だ。