第19章 【第十五講】大人しく監視される不良には裏がある
ある日の放課後。
武市を除く高杉一派の面々はいつものたまり場にいた。
「異物混入って、マジだるいっスね」
また子は机に頬杖をつき、携帯電話を弄っている。
椅子も机もだいぶガタが来ていた。
おそらく捨てられていたものを拾って来たのだろう。
この部屋は元は部室として使われていた場所だった。
廃部になり空き室となったため、彼等は勝手にたまり場とした。
部屋の奥には薄汚れたソファがあり、高杉が腰かけている。
「落ち着かないっス」
また子は一瞬、扉に視線を向けたが、すぐに携帯電話の画面に戻した。
扉の前には部屋に混入した異物――○○が仁王立ちしている。
○○は高杉、万斉、また子、似蔵に睨みを利かせていた。
「また子もサングラスをするといい。視界不良で異物も気にならなくなるでござる」
万斉はギターに目を近づけ、調整をしていた。
「……見えん」
「これ貸してあげる」
○○はポケットから虫眼鏡を取り出し、万斉に手渡した。
「おお、すまんな」
万斉は虫眼鏡で弦を見た。
「……やっぱり見えん」
薄暗い室内でサングラスをかけて見えないものは、虫眼鏡を使っても暗くて見えはしない。
「先輩、バカなんスか?」
間の抜けた三人のやり取り。
緊張感の欠片もない空気を、たったの一言でその男は入れ替えた。
「腹減ったな」
高杉がつぶやくと、○○も、また子も、万斉も、揃って表情を引き締めてその姿を目に映した。
「そうだね。何か買って来るよ。コロッケパンがいい? それとも、焼きそばパン?」
高杉の傍に控えていた似蔵が扉へと向かう。
「行かせるわけないでしょ」
○○は両手を広げ、通せんぼの格好をする。
「何人たりとも、この部屋を出すわけにはいかない」
現在、銀魂高校に興味を持った中学生が学校を訪れている。
彼等と高杉一派を接触させてはならない――
○○の使命は高杉一派を隔離しておくこと。その任務は、自分で決めた。