第18章 【第一四講】恋と抗争のドラマが織りなす境界線
夜兎工との抗争翌朝、○○は妙なものを見た。
学校に向かっている生徒達が引き返してくる。
公園を突っ切れば学校への近道になるが、生徒達が慌てて引き返してくる。
その理由を、公園に足を踏み入れた○○は知った。
ベンチに高杉が座っていた。生徒達は高杉との遭遇を避けるため、引き返しているのだった。
○○も一瞬、躊躇した。もちろん恐怖からではない。
プレハブ小屋を訪れて以来、高杉とは接触していなかった。なんとなく、顔を合わせづらい。
だが、こそこそと逃げるようなことはしたくない。逃げ隠れする理由などないのだから。
高杉など見えないように、○○は前を見て歩いた。
「大人しく消えろ。そう言ったはずだ」
だが、その言葉で足を止めた。
ベンチに座ったまま、高杉は○○を見据えていた。
○○は眉根を寄せた。あの場にいたことを、高杉に気づかれていたとは思わなかった。
「みんなを置いて、帰れるわけないじゃない」
教室を後にした○○は、校庭の木陰にいた。
高杉のことは知ったことではないが、3Zの皆が高杉一派に加勢するなら、見捨てて帰れるはずがない。
いざという時は、戦いに身を投じるつもりでいた。
その、いざという時は訪れた。
「担任もバカなら、生徒もバカしかいねェ」
抗争の真っただ中にいた3Z生徒達は気づかなかったが、傍から神威に不意打ちを食らわせる機会を窺っていた高杉には、死中に飛び込んでいった○○が見えていた。
同じクラスというだけで、関わったこともない不良を助けようとクラスメイト達を説得する新八。
義理人情に絆されて、百人の不良と対峙したクラスメイト達。
そんなクラスメイトを見捨てられず、助けに入った○○。
皆、大バカだ。