第18章 【第一四講】恋と抗争のドラマが織りなす境界線
「何言うてんねん。○○ちゃん、おったで」
「え?」
このわかりやすい喋り方の主は花子だ。
新八は俯けていた顔を上げた。
「私、○○ちゃんに助けてもろたもん」
花子は喧嘩に馴染みがない。
妙や神楽の戦闘力は銀魂高校トップクラスだが、他の女子生徒はそうはいかない。
花子をはじめ、阿音百音姉妹やハム子などは不良相手に成す術がない。
そんな生徒は、風紀委員が守りながら安全地帯へと逃がしていた。
土煙舞う中で視界が悪かったが、花子は自分を庇ってくれた○○を見た。
「やはりそうか。僕も見た」
近くにいた九兵衛も、○○を目撃していた。
「見間違いかとも思ったんだが」
乱闘が終わり、土煙が収まったグラウンドに○○の姿はなかった。
誰かと見間違えたのかと思ったが、花子も見たというならば、やはり○○だったのだろう。
「薄情なんて言わんといて」
「……○○さん、いたんですか?」
「せやからそう言うてるやろ。目だけやのうて、耳と頭も悪いんか、このあほんだら!!」
「いや、だからなんで花子さんは僕にそんなに辛辣なんですか?」
軽くボケたら「死んだらええねん!」とまで罵倒された修学旅行の夜を思い出し、新八は頬を引きつらせる。