第18章 【第一四講】恋と抗争のドラマが織りなす境界線
「ふぅ……」
新八は深く溜め息を吐く。
今になって、死地に自ら飛び込んだことに怖さを覚えてきた。
新八はクラスメイト達を説得し、高杉一派の加勢に駆けつけた。
3Zの皆を巻き込んで駆けつけたというのに、あろうことかそこに大将がいなかった。
いたのは、万斉、また子、似蔵の三人だけ。
新八は高杉不在を利用して夜兎工に休戦を申し込んだが、彼等に聞き分けなどあるはずがない。
神威は帰る素振りを見せたが、残りの百人程のヤンキーは雄たけびを上げて襲い掛かってきた。
その後、高杉が参戦したことで神威も戻り、事態は最悪の方向へ進むかと思われたが、銀八が二人の間に割って入ったことで一旦は休戦に持ち込めた。
それにしても……
新八はさらに深い溜め息を吐いた。
「どうしたの、新ちゃん」
弟の浮かない顔を目にし、妙は心配そうに言葉をかける。
「恐怖でウ●コ漏らしちゃった?」
「違います。ていうか、嫁入り前の乙女がウ●コなんて軽々しく口にしないで下さい」
新八は周囲を見回した。
桂に長谷川、ヘドロ。近藤、土方、沖田。見慣れた3Zの生徒の顔が並んでいる。
誰一人ケガもせずに抗争が終息したことに、誰もが安堵しているようだ。
「僕、見損ないましたよ。○○さんのこと」
そこに、○○の顔はない。
高杉達を見捨て、○○は帰ってしまった。
「○○さんがこんな薄情な人だとは思わなかったです」
怒気を含む新八の声音。
情の深い人だと思っていた分、落胆の度合いが大きかった。