第18章 【第一四講】恋と抗争のドラマが織りなす境界線
喧嘩を止めなくていいのかと、新八は銀八に問う。
思う存分やらせた方がいいのではないかと銀八は言う。
銀八は風紀委員と同じく、静観する意向だ。
「つーわけで、今日は席替えするぞ! 席替え編スタート!」
あっちはあっち、こっちはこっち。
ヤンキー抗争はヤンキー同士に任せ、銀八は勝手に別の話を進めようとする。
「何を言っているんですか、銀八先生!」
銀八の言葉を受け、○○は声を上げた。
新八はメガネを輝かせた。
――味方を得た!
と、思ったからだ。
正義感の塊、風紀委員の○○ならば、喧嘩を止める方法を考えようと軌道を修正してくれるはず。
だが、新八の期待は全く外れた。
「もう下校時刻ですよ! 席替えは明日にして下さい!!」
○○は鞄を取り上げ、足早に扉へと向かう。
「ちょっと待ったァァァァ!」
先程と同じフレーズを新八は繰り返した。
「帰るんですか!? 乱闘が起ころうとしているんですよ!?」
「悪い? 不良同士の喧嘩なんて、知ったこっちゃないよ」
○○に睨まれ、新八は口を噤む。
こんな怖い顔を○○に向けられたことは今までなかった。
3Zで数少ない良心であるはずの○○が、今日はとっても恐ろしい。
「てか、神楽ちゃん!」
新八は○○から視線を反らし、神楽に目を向けた。
喧嘩を止めさせられないかと、新八は神楽に懇願する。
○○は今朝知ったのだが、夜兎工の神威という不良はなんと神楽の兄だという。
兄を止めることは出来ないと、神楽は突っぱねる。
「今日のホームルームは以上だ。みんな、早く帰れよ」
結局皆で大喜利を、いや、アイデアを出し合っても、喧嘩を止める方法は見つけられなかった。
銀八は教室を出て行った。
「夜兎工の不良に絡まれないように、早く帰りなよ、新八くん」
銀八に続き、○○までもがスタスタと教室を後にする。
「○○さん……」
その背中を見つめる新八の目は寂し気だ。