第18章 【第一四講】恋と抗争のドラマが織りなす境界線
五限目、六限目と、授業はつつがなく進行した。
生徒達の興味は今夕に勃発するであろう高杉と神威の戦闘に向いているが、触らぬ神に祟りなし。
気にはなるが、誰もが関わろうとはしていなかった。
だがそれは、3Z以外のクラスでのお話。
3Zでは朝こそ話題に出たが、すっかり記憶の彼方に追いやられていた。
今は、淡々と帰りのホームルームが行われている。
「どっかに割のいいバイト転がってねーかな」と長谷川は思っている。
「毛先が痛んできたな。帰りに散髪に行くか」と桂は髪を弄っている。
「指先が傷んできたわ。帰りにメンテナンスに行かなくては」とたまはネジを弄っている。
「お妙さん、明日まで会えないと思うと、俺はしんどいです」と近藤は妙を見つめている。
「近藤さん、明日も明後日も会えないよう、死んどいて下さい」と妙は呪いを発している。
これから校庭で大抗争が行われるとは思えない程、呑気な生徒達の脳内。
「気をつけて帰れよー」
能天気なのは、担任教師もおんなじだ。
銀八も普段と変わらぬ様子で生徒達を帰路へと送り出す。
さて帰るかと、○○は立ち上がった。
「ちょっと待ったァァァァ!」
帰ろうとした生徒、雑談を始めた生徒は、その声で動きを止めた。
3Zの稀有な常識人、新八が声を上げていた。
「なんでそんなに落ち着いてるんですか!」
新八は朝から落ち着かなかった。
今夕、このグラウンドでクラスメイトの高杉と神威が激突する。
どうしようと思ってもどうすることも出来ず、帰りの刻限にまでなってしまった。