第18章 【第一四講】恋と抗争のドラマが織りなす境界線
「神威との決戦、どうするつもり?」
○○は万斉ではなく、その後ろの高杉に問いかけた。
果たし状には、互いに百人出して決戦を行おうと書いてあった。
だが、この学校に高杉の味方になる不良などいないことはわかりきっている。
高杉は壁に体を預け、悠然と腕を組んでいる。
「そんなくだらねーことを聞きに来たのか?」
彼は不敵な笑みを漏らした。
「テメーには関係ねーことだ」
今まで向けられたことのない刺すような目に胸が詰まる。
いや、これが本来の高杉のはずなのだ。
前に山崎が言っていたではないか。
――目が合っただけで、普通なら逃げ出しますよ。
逃げ出したいとは思わない。
ただ、どうしてか心が苦しい。
「風紀委員がしゃしゃり出てくることではないでござる」
万斉も武市と同じく、風紀委員にどうこう言われる筋合いはないと思っている。
当然だ。○○自身も、風紀委員として訪れてはいない。
ただ、高杉のことが気にかかっただけ。
部屋を覗いてみたが、窓は擦りガラスになっていて、中の様子は窺えなかった。
自分でも行儀がいいとは思えなかったが、扉を叩いて真っ向から乗り込むことは出来なかった。
風紀委員としてなら堂々と乗り込める。
そうじゃないなら、どうしてここを訪れる理由があるのだろう。