第18章 【第一四講】恋と抗争のドラマが織りなす境界線
「何をしているのですか」
お昼ご飯を食べ終え戻った武市は、部屋を覗く女子生徒の後ろ姿を目にした。
この場所で、また子以外の女子生徒を見るのは初めてだ。
一般の生徒は近づくことがまずない、我等の縄張り。
訪うのはボスを狙うヤンキーか、自分達を敵視する風紀委員のどちらかだ。
「おや、貴女は」
振り返った女子生徒。その顔を武市は知っていた。
武市は然りとばかりに首肯した。その生徒ならば、ここを訪う理由がある。
「覗きとは、さすが風紀委員の方は高尚なご趣味をお持ちですね」
その女子生徒が風紀委員の一人ということを知っていたからだ。
武市の口から発せられる嫌味に、○○は憮然とした表情で睨み返す。
「我々に何か御用ですか」
ギョロリとした目で武市は○○を見る。
○○は深く息を吐いた後、言葉を返した。
「決まってるでしょ。朝の件」
この日の朝、銀魂高校では騒ぎが起こった。
お昼になっても、話題はそのことで持ち切りだ。
「貴女方、風紀委員には関係のないことですよ」
武市のいうことは尤もだった。
これは、ヤンキー同士、不良同士の抗争。
少し前の○○ならば、勝手に潰し合えと思っていたかもしれない。
だが今回は、放っておけなかった。
「校庭が戦場にされるかもしれないのに、見過ごしてなんか――」
「人が午睡を愉しもうって時に、何を騒いでやがる」
背後からの声が○○の言葉を遮った。
根城から、王が姿を現した。
「晋助殿」
振り返った○○の目は、その鋭い隻眼を捉えた。
放っておけなかった。彼が、矢面に立たされているから。