第18章 【第一四講】恋と抗争のドラマが織りなす境界線
高杉が復学してから早数ヶ月。
彼は一度も問題を起こしていない。
それどころか、ボンタン狩りグループを壊滅させた。
ただ単に、他所の不良がのさばっていることが気に食わなかっただけかもしれないが、彼等のおかげでかぶき町に平穏が戻ったことは事実。
本当に高杉は皆が言う程のワルなのだろうか。
本当は……
そんなはずはない、と、○○は自らの考えを打ち消す。
高杉が復学した頃の喧騒は記憶に新しい。
生徒の誰もが浮足立ち、教師の間にも緊張が漲っていた。
皆、停学になる前の高杉を知っているから。
○○だけが、停学前の高杉を知らない。
彼が起こした悪事の数々は聞いている。
中学時代から学区外でも有名な不良だったという。
そんなことを聞かされ、○○は警戒していた。
だが今では、どうにも彼のこととは思えない。
○○には、高杉から凶悪な気配は感じられない。
○○の知っている高杉は、ただ授業をサボっている程度の不良だ。
教室にも時々訪れるようになり、真面目にとは決して言えないが、授業を受けている。
そして、桂の魔手から助けてくれた人。
――ドクン
急な動悸に○○は胸を叩く。
「何してんだ、お前」
土方は怪訝な顔を浮かべる。
「近藤さんの真似か?」
「ドラミングじゃない!」
○○は深く息を吸う。
あの時、確かに高杉は笑っていた。穏やかな目を見せていた。
その表情が焼き付いて離れない。