第18章 【第一四講】恋と抗争のドラマが織りなす境界線
「乱闘騒ぎ?」
オーディション開催から三週間が経った月曜日。
登校した○○は、その事件を土方から聞かされた。
週末、吉原商業高校で文化祭が行われた。
その最中、銀魂高と夜兎工業高の不良間で喧嘩が勃発したという。
「それって……高杉くん達?」
音楽コンテストに出場する万斉は吉原商業にいたはずだ。
出場者を決めた高杉やまた子も、文化祭に行っていたとしてもおかしくはない。
「いや」
土方はかぶりを振った。
「アイツらは関わっていないようだ」
両校の不良は吉原商業高校の教師陣に取り押さえられた。
連絡を受けた両校の教師に身柄を明け渡されたが、その中には高杉も、高杉一派の誰もいなかったという。
「そう、なんだ」
○○はホッとしたような感覚を覚えた。
同時に、そんな感覚を覚える自分に閉口する。
「文化祭には行ってたみてーだけどな」
高杉は不明だが、万斉とまた子は音楽コンテストの会場で目撃されていた。
銀魂高校からも少なくない数の生徒が遊びに行っており、その生徒達が証言している。
「喧嘩は奴等の目の届かない所で起こったんだろうな」
高杉一派の輩が乱闘に加わっていたならば、事態はもっと大事になっていたはずだ。
単純単細胞な不良達は簡単に教師に取り押さえられるだろうが、奴等だったらそうはいかない。
「アイツらが絡んでいたら、うちの不良も夜兎工の不良も構わず、半殺しにされたかもしれねーな」
土方は眼差しを鋭くさせ、窓の外を睨んでいる。
○○も窓の外に目を向ける。もうすぐチャイムが鳴るが、遅刻ギリギリの生徒達が急いで登校してくる姿が目に入る。
(そうなのかな……)
○○には、土方の言葉に実感が持てない。
近頃、○○は自分達が目を光らせている不良のことが分からなくなっている。