第17章 【第一三講】辻褄を合わせるのも楽じゃない
「それでは聞いてください。『紅』」
「アンタも『紅』ッスか!」
数時間前、また子は『紅』と言いつつ『紅』じゃない歌を歌うバカ触覚コンビを見ていた。
その他にも『紅』に掛けた演奏をする出演者がいたため、もはや辟易している。
「嗚呼~学び舎が紅に染まる~♪」
「笛吹かないんかい!」
○○はリコーダーをマイクのように持って歌う。
「また『紅』じゃないし! 何これ、銀魂高校の校歌!?」
また子は以前、万斉が奏でていたギターを思い出す。
○○が歌っている曲は全く同じリズムだった。
「何度も言うけど、学び舎は、「まなびや」と読むんだぜ~「がくびしゃ」じゃないんだぜ~♪」
「二番? これ、二番?」
○○は揚々と独唱する。
「あの女子は何者でござるか?」
「何食いついてんスか、万斉先輩!」
校歌好きの万斉は身を乗り出していた。
「これは“教師でも知ってる人いるの? いないんじゃない?”と言われる幻の銀魂高校校歌十五番の歌詞でござる」
「幻の歌詞ってなんスか! うちの校歌、十五番まであるんスか!?」
「何でもないような事が幸せだったと思う」
「晋助様!? 私も思いましたけど! 思ったけど言わなかったッス!」
ベタで。とは、また子には言えない。
そのうちに、ピーヒョロローという気の抜けるような音が響いてきた。
また子がステージに目を向けると、○○はリコーダーを咥えていた。