第17章 【第一三講】辻褄を合わせるのも楽じゃない
鬱陶しい桂の歌声から逃れ、○○は体育館の外へと向かった。
「おー、もう始まってんのか」
「銀八先生」
そこでクラス担任と出くわした。
休日だというのに仕事着の白衣を着こなし、いつも通りのサンダル履き。
気だるげな目は平日も休日も変わらない。
「どうしたんですか。当直ですか」
部活の顧問をしているわけでもない、この万年寝太郎教師が休日に出勤しているとは驚きだ。
「いや、監視だ」
「監視?」
銀八は体育館に目を向ける。
体育館からは薄っすらと音楽が漏れ聞こえる。
「ああ、高杉くんのですか」
オーディションを知って、銀八も警戒しているのだろう。
審査員として、自クラスの超絶不良が関わっている。
何かあってからでは対処が出来ないと、わざわざ出向いたということか。
「なんで高杉の監視しなきゃなんねーんだ。○○の監視だ」
「は?」
「オーディション参加者に○○の名前があったからよォ、用もねーし、見に来ただけだ」
少しは教師らしい所があるのだなと、僅かでも見直した自分がバカだった。