第17章 【第一三講】辻褄を合わせるのも楽じゃない
「部活ならともかくさ……」
と、思いながら読み進めた○○は、最下部に書かれた名前を見つけた。
背景の模様と混ざるように書かれた小さな文字は、よくよく見なければ気づかない。
そこには、オーディションの審査員が明記されていた。
高杉晋助。
主催者の河上万斉、それから来島また子の間に、その名があった。
高杉、晋助!?
○○は食い入るようにその名を凝視する。
あの銀魂高校始まって以来の最恐最悪不良が音楽コンテストオーディションの審査員?
来島また子の名があることからも、万斉の音楽活動という点に一抹の疑いを覚える。
二人とも友人を手伝うだけかもしれないが、警戒は必要かもしれない。
「はい!」
○○は挙手した。
互いの胸倉を掴んでいた土方と沖田が何事かと目を向ける。
近藤も振り仰いでいる。
「私が来る」
「なんの話だ?」
「なんのって、だから、オーディション当日。私が来る」
土方は怪訝な顔をした。
突然変転したことに疑問を感じる。
「見張りなんていらないんじゃなかったのか?」
○○は首を振る。
「見張りじゃない。出場する」
「あ?」
「オーディションに出る」
土方はますます怪訝な顔をした。
「お前、楽器なんか出来ねーだろ」
○○はフッと息を吐いた。
「見くびってもらっちゃァ、困るよ」