第17章 【第一三講】辻褄を合わせるのも楽じゃない
「別段、問題はなさそうだけど」
○○は近藤から紙を受け取り、文面に目を通した。
オーディション開催場所は体育館となっている。
体育館の使用許可が下りているならば、学校に認められているということだ。
「河上くんって、バンドやってるんでしょ?」
万斉がギターを弾くことは○○も知っている。
弾き語り(銀魂高校校歌の)をしている所も見たことがある。
ヤンキーだからといって、青春の全てを喧嘩に向けているとは限らない。
「音楽活動の一環なんじゃないの?」
「いや、バンド活動をしている所は見たことがねェ」
確かに、万斉はバンドを組んではいない。正確に言えば、組もうとしている段階だ。
ボーカルに据えたい高杉がバンドに加わることを断り続けているため、結成出来ずにいる。
「表向きにはオーディションだとか言って、何か企てているのかもしれねェ」
土方は表情を硬くする。
「当日は誰かしら見張りをつけてーんだが……」
オーディションは土曜日に設定されていた。
土方は別件のため学校に来られないという。
「生憎だが、俺もこの日は隣町まで用事があるんだ」
この土曜日、妙と神楽が遊園地に行く計画を立てていることを近藤は知っていた。
用事がストーキング行為だとはおくびにも出さず、神妙な顔をしている。
「総悟――」
「あ、俺もパスっす」
皆まで言わせず、沖田は制する。
「お前も予定があるのか」
「ええ。土曜日は『王様の●ランチ』を見なきゃならねーんで」
「ンなこったろうと思ったぜ。テメェが来い」
「なんでわざわざ休日に学校来なきゃならねーんでィ」
嫌だ、来い、との応酬が繰り広げられる。
「総悟の言う通りだよ。休日にまで見張りなんていらないって」
○○は再び文面に目を落とした。