第16章 【第十二講】いつかまたこの場所で君とめぐり会いたいはチェリー
午後の日差しで暖められたコンクリートに座り、三人はそれぞれのパンを頬張っている。
土方はツナマヨパンにさらにマヨを塗りたくっている。
雲一つない青空に鳥が舞っている。自由に飛行するその姿を見て、近藤は呟いた。
「俺……やっぱり空も飛べる気がする」
「何言ってんですか、近藤さん」
以前、繁華街を見廻っている時に見かけた近藤。
その時に乗っていた変な形の自転車は、空を飛ぶために改造されたということを○○は知らない。
「五限目サボって、このままここで寝ちゃいたいよ」
五限目は倫理の授業。
心地よい陽気と、満たされたお腹。
教師の声が子守唄となり、深い眠りに誘われそうだ。
「何言ってやがる」
土方は一人、ピリピリしている。
「奴がいつ動き出すかわかんねーのに、気の抜けたこと言ってんじゃねェ」
高杉が教室に現れるようになったのは、何かを企てているからではないかと、土方は睨んでいる。
四限目に現れたこともあり、警戒心は増している。
「もちろん、警戒はしてるよ」
ふわァと○○は欠伸をする。
「そんな風には見えねーな」
「風紀委員みんなで用心してれば、易々と問題は起こさせないよ。ね、近藤さん」
○○は横に座っているはずの近藤に目を向けたが、見えたのは屋上の柵だけ。