第15章 【第十一講】帰ってきた史上最強最凶最恐ヤンキー
高杉は不良共に体育館裏へと連れ出された。
といっても、先頭を歩いていたのは高杉。
傍から見れば、高杉が手下を引き連れているように見えた。
彼等に合わせ、○○と山崎も東から西へと場所を移動した。
屋上からは、プレハブ小屋も体育館裏も見下ろせる。
「小説って便利だね」
「というか、ご都合主義ですね」
そんなことを言っている間に、高杉は不良に取り囲まれた。
しかし、なかなか喧嘩は始まらない。
泰然とした高杉の雰囲気に圧倒されているのか、不良共は誰一人として動かない。
そのうちに、一人の女生徒が駆けつけた。
高杉一派の来島また子だ。
「で、結局、高杉は手を出さないで、リーゼントの奴が一人でコテンパンだよ」
○○は昨夕の出来事を思い出しながら宙を見つめる。
「岡田似蔵か。奴の手にかかりゃ、この学校の不良共などザコだろうな」
土方は腕をこまねく。
銀魂高校には風紀委員と渡り合える不良はいない。
高杉の長期停学により、なりを潜めていた高杉一派くらいのものだ。
風紀委員に抑え込まれる不良が、高杉達を相手に敵うはずはない。
「十人以上を、茶色い……あれ、こん棒だったのかな? 山崎、見えた?」
「いえ、遠くて俺にも」
「こん棒みたいなもので、一瞬だったよ」
高杉に襲いかからんとした不良共は、疾風のように現れた岡田によってのされた。
その武器はこん棒のようなもの――に、屋上の○○からは見えていたが、実はコロッケパンである。
「不良共も手を組めば打つ手はあったかもしれないけど、所詮は一人一人の集まりだからね」
一人が襲いかかったら、何も考えずに他の不良も反射のように襲いかかっていた。
あれでは、岡田にとっては一対一と変わらない。
もし、誰かが高杉を倒したとしても、手柄を自分のものにしようとさらに乱闘が起こっていたかもしれない。
片や、高杉一派は一枚岩だ。
武市の姿は見えなかったが、また子は駆けつけ、岡田はボスの手を煩わせることを厭い(と、○○は思った)、自らが矢面に立った。
「相変わらず厄介な連中だな。このまま大人しくしているわきゃねーしな」
いずれ、真正面からやりあう日も来るだろう。
そして、その日はすぐに訪れた。