第15章 【第十一講】帰ってきた史上最強最凶最恐ヤンキー
「そんなの噂が飛躍しすぎてるんじゃない? 私が睨んでも、別に絡んで来なかったよ」
「え、睨んだ? ○○さん、高杉ともうやりあったんですか?」
山崎は驚く。
近藤や土方も、彼等の行動には静観している状態だ。
早々に○○が高杉といざこざを起こしていたなど、誰も知らない。
「復学初日に昇降口の前で見かけただけだよ」
高杉復学の朝、朝練後に○○は高杉を見かけた。武道場から昇降口へと向かう途中で目が合った。
赤いシャツを身にまとうその生徒を、○○は今まで見たことがなかった。
どこのクラスの不良だ? と、思った所で、彼は校舎の向こうへと去って行った。
「あれが高杉って奴だったってことは、後から分かったんだけど」
土方くんみたいな赤いシャツが見えて、つい睨んじゃったよという○○の言葉に、山崎は頬を引きつらせる。
「よかったですよ。何事もなくて」
山崎は安堵する。
「復学初日から騒ぎを起こすことは避けたんですかね」
「そんなことに気を遣う不良いる?」
「今度は停学じゃ済まない可能性もありますし」
短絡的に事件を起こす、そこらの脳味噌が足りない単純な不良とは違う。
そんな思慮深さも、そこらのバカ不良共と一線を画して見られている理由でもある。
「だったら、退学になること気にしてこれからも大人しくしてるんじゃない?」
「そんなはずは……」
あの高杉に限って、従順な高校生活を送るはずがない。
そもそも、授業には出ていないから、このままでは卒業は不可能だ。
そんなことをしていれば、いずれは退学になる。
だが、復学して十日以上経つのに本性を現していない点は解せない。
うーん、と考えていた山崎は、真下を歩く異様な軍団に気づかなかった。
「ねェ、脳味噌が足りてなさそうな連中が来たよ」
○○の言葉で山崎は視線を向けた。
「何ですか、あいつら!!」
校舎裏に、そこらのバカ不良共がぞろぞろと歩いていた。